洋学史学会若手部会

洋学史学会に所属する大学院生・学部生を中心とする若手部会です。

【紹介】本ブログおよび今後の開催予定について

 洋学史学会若手部会は、洋学史学会に正式に承認された支部であり、洋学史学会に所属する大学院生・学部生などを中心とする研究会です。原則として偶数月第1土曜日の午後に開催します。 各種研究報告はもちろん、洋学史研究に関連する情報収集・共有の場としていく予定です。洋学史学会非会員の方であっても、参加は可能です。本ブログでは、洋学史学会若手部会の活動について発信していきます。
 お問い合わせは、洋学史学会若手部会(yougakushi.wakate@gmail.com)までお願いいたします。

 NEW! Informationを開設しました。
 ※上記ページにて運営委員、会則、入会方法等についてご案内しています。

今後の開催予定について
 いずれも会場は電気通信大学東1号館で、詳細については開催1ヶ月前を目途に更新予定です

 

【第17回/2020年4月4日(土)】
武正泰史(東京大学大学院博士前期課程)
阿曽歩(国際基督教大学大学院博士後期課程)

【第18回/2020年6月6日(土)】
堅田智子(流通科学大学講師)
阿部大地(西南学院大学大学院博士後期課程)

【第16回若手部会】内容報告

 洋学史学会若手部会2月例会(第16回)を開催いたしました。今回は、会員2名による研究報告でした。以下にその概要を報告いたします。

日時:2020年2月1日(土)14:00~18:00
会場:電気通信大学東1号館8階806会議室

報告①

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山本瑞穂(東京大学大学院修士課程)
「中立国傭船期の異国船情報」

 本報告では、享和3年(1803)に来航した二艘のイギリス系商船、フレデリック号とナガサキ号の事例から、長崎における異国船対応の様相を検討した。双方の事例から、長崎奉行所による情報管理、オランダ通詞による隠蔽工作、長崎警備を担当した諸藩、特に佐賀藩を中心とした情報収集の様相、オランダ商館による保身の動向が明らかになった。この議論から中立国傭船期が、日本貿易継続のための傭船派遣が長崎に危機をもたらしつつも、アメリカやイギリスの自由貿易商人にとっては市場開拓の機会となった時期だと指摘された。

 報告後の質疑では、今後の課題、特に国際法における傭船の位置付けについての展望、オランダ通詞がフランス人と虚偽の報告をした理由、九州諸藩における長崎警備の実態などが議論された。

 

報告②

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臺由子(明治大学大学院博士後期課程)
「ドイツのPfennig-Magazin,オランダのNederlandsch Magazijn,そして日本の『官板 玉石志林』の関係性に関する一考察」

 本報告では、廉価な労働者階級向け教養雑誌である、ドイツのPfenning-Magazin (以下PfM)と、オランダのNederlandsch Magazijn (以下NM)に共通するパリ自然史博物館についての記事と、NMを翻訳した箕作阮甫の翻訳の能力に焦点をあてた。本報告を通して、イギリスで刊行されたPenny Magazine以降続く教養雑誌の系統の中に、箕作の『玉石志林』を位置付ける可能性、箕作の翻訳における姿勢と苦労などが示された。

 フロアからは、原文とされるドイツ語のニュアンスに近い翻訳を施そうとする箕作の翻訳センスの高さが指摘された。また、今後の展望の一つとして箕作が何らかの指示を受けて翻訳を行ったのか、主体的に翻訳を行ったのかという、箕作の執筆背景についてコメントがされた。

【洋学史学会若手部会2月例会(第16回)】開催案内

洋学史学会若手部会2月例会(第16回)を開催いたします。
ご関心のある方は、この機会に是非お越し下さい。
(お問い合わせ先:洋学史学会若手部会 yugakushi.wakate@gmail.com)

 【洋学史学会若手部会2月例会(第16回)】

日時:2020年2月1日(土)14:00~18:00
会場:電気通信大学東1号館8階806会議室
参加資格:なし。事前登録制(登録はコチラ

14:00~15:30 報告①
山本瑞穂(東京大学大学院修士課程)
「中立国傭船期の異国船情報」

【要旨】
本報告は、享和3年(1803)のイギリス系商船来航事件を通して、長崎における異国船対応の様相の解明することを主題とする。オランダ東インド会社は1797年から1807年まで、イギリスによる海上攻撃を避けながら日本貿易を継続するため、戦争中立国の船と傭船契約を結び、オランダ船として長崎に派遣していた(中立国傭船期)。しかしそれが裏目に出て、傭船で過去に来航したアメリカ商人が独自に再来航を企図し、上述のイギリス船来航事件を引き起こした。今回、この特殊な背景を持つ事例を題材に、長崎警備を担う九州諸藩の記録や、福岡藩士の風説留、外交資料集『通航一覧』、出島の商館日記といった日蘭双方の史料を用いて、阿蘭陀通詞・長崎奉行所・九州諸藩の間で異国船情報が改変・伝達される過程を整理した。これにより、日蘭関係史上に中立国傭船期を位置付け直し、当時の長崎の危機管理体制の一端を明らかにすることを試みる。
【参考文献】
金井圓『日蘭交渉史の研究』思文閣出版、1986年
横山伊徳『開国前夜の世界:日本近世の歴史5』吉川弘文館、2013年

 

15:50~17:20 報告②
臺由子(明治大学大学院博士後期課程)
「ドイツのPfennig-Magazin,オランダのNederlandsch Magazijn,そして日本の『官板 玉石志林』の関係性に関する一考察」

【要旨】
『官板 玉石志林』(以下『玉石志林』)は,蕃書調所が Nederlandsch Magazijn (荷蘭宝函) から記事を邦訳して編纂したものである。当初,月刊誌で計画がたてられたが,文久3(1863)年頃,全4巻にて刊行された。
この,Nederlandsch Magazijn(以下NMと略称する)は1832年にイギリスで刊行されたPenny Magazine(以下PMと略称する)に影響を受けヨーロッパの主要な都市の出版社によって刊行された廉価な労働者階級向けの教養雑誌の一つである。それらはお互いに記事の共有をも契約していたらしい。
ドイツのPfennig-Magazin(以下PfMと略称する)からNMへ翻訳された記事が『玉石志林』に関わった箕作阮甫が途中まで翻訳いるものを見つけることができた。また,PMとNMで同じ記事があることも分かった。
ここでは,その記事を手がかりとして,①『玉石志林』をPMに始まる廉価な教養雑誌のなかに位置づける,②阮甫の翻訳のセンスに焦点を当てる,③阮甫の翻訳が刊行されていたら何が変わったのか,といった可能性を探ろうと考えている。
【参考文献】
朝倉治彦「「玉石志林」について」『国史学』pp.61-72,国史学会 東京 1955
石山洋「蘭学におけるオランダ地理学」『地理学史研究2』pp.59-121,臨川書店,京都(1962年柳原書店の復刻版)1979
伊東剛史 一九九九年度修士論文要旨「『ペニー・マガジン』(一八三二-一八四五)の編集戦略-知識の有用性と商品価値」『史学』70-1 pp.134-135 三田史学会 2000
「チャールズ・ナイトと『ペニー・マガジン』―十九世紀前半英国の出版文化」『史学』74-(1・2) pp.131-159 三田史学会 2005
木下知威「指文字の浸透」『手話学研究』26,pp.53-102 日本手話学会2017
蘭学資料研究会編『箕作阮甫の研究』思文閣出版 京都 1978 


18:00~20:00 懇親会(調布駅周辺)

【第15回若手部会】内容報告

 洋学史学会若手部会12月例会(第15回)を開催いたしました。今回は、会員2名による研究報告を開催しました。以下にその概要を報告いたします。

日時:2019年12月7日(土)13:00〜17:00

報告①

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報告者:西留いずみ(國學院大學大学院博士後期課程)
題目:「第二次長州征討における千人同心の医療」

 本報告は2018年7月の関東近世史研究会例会シンポジウムの報告、及びその成果を収録した岩橋清美・吉岡孝編『幕末期の八王子千人同心と長州征討』 岩田書院 2019年内の「八王子千人同心と医療」をもとにしたものであった。

 報告では、幕府がどのような医療環境を準備したのかを第二次長州征討における八王子千人同心の日記などを使って検討し、システィマッティックに準備された医療は、無謀な戦いといわれる第二次長州征討を引き起こした幕府がこの時点では合理的に機能していたことや幕府がこの時点で可能な限りの医療を準備して戦争に臨んだことを評価すべきであることが報告された。

 フロアからは、幕府の命令系統や組織など(小隊に従軍医師がついていないことなど)や長州藩(及び諸藩)の医療体制の検討がなされていないことから本当にシスティマティックな医療が展開されたと位置づけられるのかの指摘がなされたほか、報告タイトルが「第二次長州征討における千人同心の医療」となっていることから、戦時中を予想させるものとなり、実際の大坂滞在中(戦闘準備中)が連想できないものとなっていること、戦時前後の「死」の扱い方がどのような位置づけでなされているかなどの質問がなされた。

 

報告②

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 報告者:浦部哲郎(法政大学大学院博士後期課程) 
題目:「カナダ産人参の長崎到来までの経緯」

 本報告は『洋学』第26号(2019年)の報告者の論文「カナダ産人参の長崎到来までの経緯」をもとにしたものであった。

 報告では、イエズス会フランス人宣教師ジャルトゥーによる人参の報告やラフィトーがカナダで発見し、フランスに持ち帰った人参(中国に渡り、「広東人参」と称されるカナダ人参)がその一部が唐船によって長崎で運ばれてきたことが紹介された。さらに、この経緯を明らかにするとともに、この人参が日本にもたらされた後の需要やその後、徐々に貿易ルートから消えていく過程が報告された。

 フロアからは、日本がこの人参を得るに至った情報は何によるものなのか、また誰が何のために発注しようとしたのか、また、逆に日本で生産された人参が中国へどのような形で伝わったのか(情報、実物など)、この人参は中国から日本へ伝わったが、朝鮮へ伝わっていないのか、また、朝鮮から日本へ入ってきているかどうか、人参の使用法の各国の共通点や違いなどはどこなのかなどの質問がなされた。

【洋学史学会若手部会12月例会(第15回)】開催案内

第15回洋学史学会若手部会の例会を開催いたします。
ご関心のある方は、この機会に是非お越し下さい。
(お問い合わせ先:洋学史学会若手部会 yougakushi.wakate@gmail.com)

洋学史学会若手部会12月例会(第15回)】
日時:2019年12月7日(土)13:30〜16:45
会場:電気通信大学東1号館8階806会議室
参加資格:なし。事前登録制(登録はコチラ

13:30〜15:00 報告①
西留いずみ(國學院大學大学院博士後期課程)
「第二次長州戦争における千人同心の医療」

15:15~16:45 報告②
 浦部哲郎(法政大学大学院博士後期課程) 
「カナダ産人参の長崎到来までの経緯」

18:00〜20:00 懇親会兼忘年会(新宿駅周辺)※予算6,000円程度

【第14回若手部会】内容報告

洋学史学会若手部会10月例会(第14回)を開催いたしました。今回は、会員2名による研究報告を開催しました。以下にその概要を報告いたします。

日時:2019年10月5日(土)14:00〜18:00

報告①

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報告者:川島丈尚(東洋大学大学院博士前期課程)
題目:写真師島霞谷と島隆―日本初の写真師夫妻―

 本報告では、幕末から明治初期に活躍した写真師・島霞谷と島隆夫妻の写真研究について考察がなされた。川島氏によれば、島夫妻については、手書き史料などが未分析のままになっており、写真師としての研究や活動の詳細が明らかになっていないという。中でも氏が学部卒業論文で注目したのは、島霞谷の「実験ノート」(群馬県立歴史博物館蔵)や蕃書調所や開成所、大学東校時代の活動、島隆の「旅日記」(同)であった。修士論文にむけた今後の研究では、島夫妻を中心に幕末期の化学知識の発展から幕末維新期の化学情報ネットワークを考察していきたいとの報告がなされた。

 フロアからは、まず写真史の中での島夫妻についての位置づけに関する質問がなされた。また、島夫妻の写真研究を化学史で捉えた際の位置づけに関する質問、そして、蕃書調所のネットワークに松木弘安(後の寺島宗則)も含めてはどうかとの指摘がなされた。 

報告②

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報告者:都築博子(静岡理工科大学非常勤講師)
題目:箕作阮甫の海外情報―藤枝市岡部町廻沢町内会所有・藤枝市立郷土博物館寄託「松岡神社史料」の中の「異船渡来」綴4冊から―

  本報告では、静岡県藤枝市における史料調査で発見された「異船渡来」(全4冊)の中に収録された津山藩の蘭学者・箕作阮甫による海外情報について、史料紹介と今後の展望が報告された。都築氏によれば、「異船渡来」は、旧幕臣であった松岡萬を祀った松岡神社に保存されていた史料で、松岡が幕末の動乱期に収集した情報である可能性があるという。また、「異船渡来」に収録された箕作阮甫の文書は「意見書」のようなものであり、当時機密情報であった可能性が高いという。今後は史料情報を特定するために『弘化雑記』や『嘉永雑記』といった他の史料との比較が課題であるとの報告がなされた。

 フロアからは、本当に「異船渡来」に収録された文書が箕作阮甫のものなのかどうか質問がなされた。また、松岡萬との関係で、静岡県知事の関口隆吉との交流に関する質問、そして「異船渡来」に収録されていた他の資料に関するの質問もなされた。

 

【洋学史学会函館大会若手巡検】報告

 昨年に引き続き、2019年9月6日(金)および7日(土)午前、洋学史学会函館大会(http://yogakushi.jpn.org/sep-general.htmlの開催にあわせ、若手部会有志により函館市内にて若手巡検を実施しました。箱館戦争終結150周年に関連する史跡を見学しました。また、北海道函館中部高等学校、函館市立中央図書館に所蔵される、諸術調所、箱館学問所、箱館洋学所が収集した洋書群であり、堀達之助が創設にかかわった函館文庫の現存状況も調査しました。(写真撮影:堅田智子)

 

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土方歳三最期の地碑(於一本木関門跡)

 

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中島三郎助父子最後之地

 

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函館文庫の調査のため、北海道函館中部高等学校へ

 

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伊能忠敬北海道最初の測量地(於函館山

 

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函館市立中央図書館での調査の様子

函館市公式観光情報 史跡:https://www.hakobura.jp/db/db-view/cat129/

函館市文化・スポーツ振興財団「堀達之助~函館ゆかりの人物伝~」:http://www.zaidan-hakodate.com/jimbutsu/06_ha/06-horitatsu.html?fbclid=IwAR3NusSTdnmnH79j9l5PaRxEeHfBJKoBUCl1U8MRXOXt9zqwY0VpGhnulGU