洋学史学会若手部会

洋学史学会に所属する大学院生・学部生を中心とする若手部会です。

【第2回若手部会】内容報告

第2回若手部会を開催いたしました。今回の内容は、会員2名による研究報告でした。持ち時間90分のうち、報告・質疑の配分は報告者に一任し、積極的な議論が交わされました。以下にその概要を報告いたします。

 

日時:2017年10月8日(日)15:00~18:15

 

研究報告①

報告者:橋本真吾(東京工業大学大学院博士後期課程)

題目:「幕末期における民主主義概念の翻訳とその反応―「共和政治」を中心に―」

 

 近世後期~幕末における日本の米国認識を明らかにすべく、西洋の政治概念である「共和政治(あるいは「共和」)」がどのように翻訳されていたのかについて蘭語資料を元に、訳語成立の定説の再検証を行うものであった。 橋本は、「共和政治」という語を初めて世に出したとされる蘭学者箕作省吾による『坤輿図識』(1845)において、この言葉が”republiek”の訳語としてだけでなく、アメリカ合衆国の国名の蘭語である”Verenigde Staten”としても用いられてきたことに注目すべきであると指摘した。 またフロアからは、フェートン号事件以後の蘭学者たちの米国認識に関する質問や、中国語での「共和」の意味に関する質問が出た。

 

研究報告②

報告者:阿部大地(西南学院大学大学院博士後期課程)

題目:「ウィーン万国博覧会に出品された天産物とその評価」

 

 1873(明治6)年において、動植鉱物といった天産物の展示がなされ、評価を受けたのか、という趣旨の報告であった。阿部は、近代日本が博覧会を早期受容できた背景のひとつとして挙げられる物産会や薬品会(本草家などによる天産物を主体とする展示)との連続性に注目し、明治政府が初めて公式参加を果たした万博において、参加交渉の過程、展示品収集、評価にいたるまでの天産物の位置付け、内容を検討した。報告後、フロアからは、勧業に資する貿易品(茶や生糸、烟草など)と天産物との関係を問う質問や、天産物収集に関与した本草家たちは、報告書の評価をどのように受け止めていたのかといった質問がなされた。

                                (文・阿部大地)