第4回若手部会を開催いたしました。今回の報告は、会員2名による研究報告でした。以下にその概要を報告いたします。
日時:2018年2月17日(土)15:00~
研究報告①
報告者:渡邉奨太(東海大学大学院博士前期課程)
題目:「「蛮社の獄」に関する一考察」
『慎機論』・『戊戌夢物語』等にみられる渡辺崋山・高野長英の思想と薪水給与令(天保13年)の関連性を指摘し、さらに天保期以降の江戸幕府の海防政策や風説禁止令(嘉永3年)と関連づけて蛮社の獄を位置づけようとするものだった。報告後、フロアからはまず、モリソン号事件の情報が尚歯会メンバーに流れた背景についての指摘があり、そして、佐藤昌介氏ら先行研究への報告者の立ち位置、海防論を中心にした崋山・長英の思想の独自性や影響力、報告者の考える蛮社の獄と風説禁止令との関連性等についての質問があり討論が行われた。
研究報告②
報告者:橋本真吾(東京工業大学大学院博士後期課程)
題目:「箕作省吾訳『話聖東小伝』の成立とその影響―小関三英『ナポレオン伝』との比較を通じて」
アメリカ合衆国初代大統領ジョージ・ワシントン像が幕末期の日本においてどのように形成されたのか考察し、そしてナポレオン像と比較しながらその歴史的な意義を論じるという内容だった。報告者は「話聖東小伝」(箕作省吾『坤與図識補』所収)というワシントンの伝記の箕作阮甫・省吾による訳文成立の過程を明らかにし、また、それが広く筆写された実態、さらにワシントンに関して様々な人物が言及していたことを通して、公議政体論への影響という点からワシントン像の流布を意義付けた。報告後、フロアからは、比較対象としてナポレオンだけでなくピョートル一世像も入れるべきではないか、「話聖東小伝」以外のワシントン情報が日本へ入ってくるルート、「話聖東小伝」のオランダ語原典の史料批判についての指摘があった。さらに、なぜワシントンや人物像そのものに注目が集まったのか、「話聖東小伝」中でワシントンに「話聖東」という字があてられた理由についての質問があり討論が行われた。
(文・阿部大地)