洋学史学会若手部会

洋学史学会に所属する大学院生・学部生を中心とする若手部会です。

【第6回若手部会】内容報告

第6回若手部会を開催いたしました。今回の報告は、会員2名による研究報告でした。以下にその概要を報告いたします。

 

日時:2018年6月2日(土)15:00~18:15

研究報告①

報告者:阿部大地(西南学院大学大学院博士後期課程)

題目:「ウィーン万国博覧会の展示品収集――派遣局員に注目して」

 

 ウィーン万国博覧会のために全国各地から集められた物品を管理する博覧会事務局に着目し、東京国立博物館所蔵の諸資料を用いて、全国的な展示品収集の実態について考察がなされた。報告後、フロアからは、全国に送付された「物産大略」に地域差が出てくる理由や収集品のなかで鉱物が重視される理由についての質問があった。さらに、「物産大略」(ないしは『五畿八道産物記』)の成立過程に関して江戸時代の風土記などの影響があるのではないかといった指摘や、明治初期の政治局面の動乱との関連を説明した方がよいのではないかといった指摘がなされ、討論が行われた。

 

研究報告②

報告者:塚越俊志(法政大学第二中高等学校非常勤講師)

題目:「土佐藩蝦夷地開拓・警衛とロシア認識」


 土佐藩における蝦夷地開拓および警衛について、藩主山内豊信や坂本龍馬の構想をもとに明らかにし、さらに蝦夷地警衛の背後にあるロシアへの意識も視野に入れた考察がなされた。報告者によれば、土佐藩は幕末の早い時期から独自に情報を集めて着実に準備をしていたことが、明治以降に蝦夷地開拓・警衛をスムーズに進めることに繋がったという。報告後、フロアからは、山内豊信が蝦夷地に興味を持った契機やロシアに関する情報の入手の方法について、また蝦夷地開拓における共同体意識または藩意識の有無についての質問があり、討論が行われた。

                                 (文・阿曽歩)