洋学史学会若手部会

洋学史学会に所属する大学院生・学部生を中心とする若手部会です。

【第14回若手部会】内容報告

洋学史学会若手部会10月例会(第14回)を開催いたしました。今回は、会員2名による研究報告を開催しました。以下にその概要を報告いたします。

日時:2019年10月5日(土)14:00〜18:00

報告①

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報告者:川島丈尚(東洋大学大学院博士前期課程)
題目:写真師島霞谷と島隆―日本初の写真師夫妻―

 本報告では、幕末から明治初期に活躍した写真師・島霞谷と島隆夫妻の写真研究について考察がなされた。川島氏によれば、島夫妻については、手書き史料などが未分析のままになっており、写真師としての研究や活動の詳細が明らかになっていないという。中でも氏が学部卒業論文で注目したのは、島霞谷の「実験ノート」(群馬県立歴史博物館蔵)や蕃書調所や開成所、大学東校時代の活動、島隆の「旅日記」(同)であった。修士論文にむけた今後の研究では、島夫妻を中心に幕末期の化学知識の発展から幕末維新期の化学情報ネットワークを考察していきたいとの報告がなされた。

 フロアからは、まず写真史の中での島夫妻についての位置づけに関する質問がなされた。また、島夫妻の写真研究を化学史で捉えた際の位置づけに関する質問、そして、蕃書調所のネットワークに松木弘安(後の寺島宗則)も含めてはどうかとの指摘がなされた。 

報告②

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報告者:都築博子(静岡理工科大学非常勤講師)
題目:箕作阮甫の海外情報―藤枝市岡部町廻沢町内会所有・藤枝市立郷土博物館寄託「松岡神社史料」の中の「異船渡来」綴4冊から―

  本報告では、静岡県藤枝市における史料調査で発見された「異船渡来」(全4冊)の中に収録された津山藩の蘭学者・箕作阮甫による海外情報について、史料紹介と今後の展望が報告された。都築氏によれば、「異船渡来」は、旧幕臣であった松岡萬を祀った松岡神社に保存されていた史料で、松岡が幕末の動乱期に収集した情報である可能性があるという。また、「異船渡来」に収録された箕作阮甫の文書は「意見書」のようなものであり、当時機密情報であった可能性が高いという。今後は史料情報を特定するために『弘化雑記』や『嘉永雑記』といった他の史料との比較が課題であるとの報告がなされた。

 フロアからは、本当に「異船渡来」に収録された文書が箕作阮甫のものなのかどうか質問がなされた。また、松岡萬との関係で、静岡県知事の関口隆吉との交流に関する質問、そして「異船渡来」に収録されていた他の資料に関するの質問もなされた。

                               (文・橋本真吾)