洋学史学会若手部会

洋学史学会に所属する大学院生・学部生を中心とする若手部会です。

【第15回若手部会】内容報告

 洋学史学会若手部会12月例会(第15回)を開催いたしました。今回は、会員2名による研究報告を開催しました。以下にその概要を報告いたします。

日時:2019年12月7日(土)13:00〜17:00

報告①

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報告者:西留いずみ(國學院大學大学院博士後期課程)
題目:「第二次長州征討における千人同心の医療」

 本報告は2018年7月の関東近世史研究会例会シンポジウムの報告、及びその成果を収録した岩橋清美・吉岡孝編『幕末期の八王子千人同心と長州征討』 岩田書院 2019年内の「八王子千人同心と医療」をもとにしたものであった。

 報告では、幕府がどのような医療環境を準備したのかを第二次長州征討における八王子千人同心の日記などを使って検討し、システィマッティックに準備された医療は、無謀な戦いといわれる第二次長州征討を引き起こした幕府がこの時点では合理的に機能していたことや幕府がこの時点で可能な限りの医療を準備して戦争に臨んだことを評価すべきであることが報告された。

 フロアからは、幕府の命令系統や組織など(小隊に従軍医師がついていないことなど)や長州藩(及び諸藩)の医療体制の検討がなされていないことから本当にシスティマティックな医療が展開されたと位置づけられるのかの指摘がなされたほか、報告タイトルが「第二次長州征討における千人同心の医療」となっていることから、戦時中を予想させるものとなり、実際の大坂滞在中(戦闘準備中)が連想できないものとなっていること、戦時前後の「死」の扱い方がどのような位置づけでなされているかなどの質問がなされた。

 

報告②

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 報告者:浦部哲郎(法政大学大学院博士後期課程) 
題目:「カナダ産人参の長崎到来までの経緯」

 本報告は『洋学』第26号(2019年)の報告者の論文「カナダ産人参の長崎到来までの経緯」をもとにしたものであった。

 報告では、イエズス会フランス人宣教師ジャルトゥーによる人参の報告やラフィトーがカナダで発見し、フランスに持ち帰った人参(中国に渡り、「広東人参」と称されるカナダ人参)がその一部が唐船によって長崎で運ばれてきたことが紹介された。さらに、この経緯を明らかにするとともに、この人参が日本にもたらされた後の需要やその後、徐々に貿易ルートから消えていく過程が報告された。

 フロアからは、日本がこの人参を得るに至った情報は何によるものなのか、また誰が何のために発注しようとしたのか、また、逆に日本で生産された人参が中国へどのような形で伝わったのか(情報、実物など)、この人参は中国から日本へ伝わったが、朝鮮へ伝わっていないのか、また、朝鮮から日本へ入ってきているかどうか、人参の使用法の各国の共通点や違いなどはどこなのかなどの質問がなされた。

                                (文・塚越俊志)