洋学史学会若手部会

洋学史学会に所属する大学院生・学部生を中心とする若手部会です。

【洋学史学会若手部会6月オンライン例会】開催案内

  洋学史学会若手部会では、新型コロナウイルス感染拡大防止を目的に、当面の間、オンラインにて例会を開催することといたしました。
 緊急事態宣言下にあっては、これまでのように一堂に会し、研究発表や意見交換を行なうことは困難です。そうした中でも、研究成果を報告する場を維持したい、若手研究者同士の交流を深め、研究活動のモチベーションを高めたいとの思いから、オンラインによる例会の開催を決定いたしました。
 なお、オンライン形式の例会は、機器やインターネット回線への負担等を考慮し、これまでの通常例会と異なり、月に2度、隔週土曜日に開催予定です。下記日程で初のオンライン例会を開催いたしますので、ふるってご参集ください。

【洋学史学会若手部会6月オンライン例会】
◆6月6日開催
日時:6月6日(土)14:00~15:00 (例会終了後に茶話会を予定)
会場:参加者にURLを送付
参加資格:なし
ただし、事前登録制(https://forms.gle/ysZoSSUNuP2YiNS6A
※6月4日(木)17時入力締切

例会準備の関係上、6月に開催される2回分の出欠をまとめてとります。入力後に変更が生じた場合は、運営まで個別にご相談ください。

報告者:武正泰史(東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程)
報告タイトル:「和算書『拾璣算法』に関する検討―秘伝とその普及について」

【要旨】
 和算書『拾璣算法』(1766自序・1769年刊)は、久留米藩7代目藩主有馬頼徸(1714-1783)が豊田文景の名前で執筆し、出版したとされている。同書は、関流という和算家集団の間で、秘伝とされてきた知識を、出版物として初めて公にしたとされてきた。多くの和算家に読まれたと推察され、新庄藩士安島直円(1732-1798)による『拾璣解』など、解説書が存在する。また、麻田剛立(1734-1799)といった天文暦学者も同書に言及しており、その影響力の大きさも推察できる。
 しかし、同書が初版の出版以降、江戸時代を通してどのように出版され、普及したのか明らかになっていない。そこで本報告では、現存する『拾璣算法』の書誌情報から、初版以降の出版状況を確認する。また、有馬が豊田の名前で同書を著したと確実に示した上で、同書により普及した内容、特に関流の秘伝の内容を、有馬がどのように学んだのかを明らかにする。以上の議論から、有馬はなぜ秘伝を公開したのか、その意図を考察する。

【参考文献】
日本学士院編『明治前日本数学史』岩波書店、1954-1960年。
米光丁、藤井康生『拾璣算法―現代解と解説』私費出版、1999年。

◆6月20日開催
日時:6月20日(土)14:00~15:00(例会終了後に茶話会を予定)
会場:参加者にURLを送付
参加資格:なし
ただし、事前登録制(https://forms.gle/ysZoSSUNuP2YiNS6A
※6月4日(木)17時入力締切

例会準備の関係上、6月に開催される2回分の出欠をまとめてとります。入力後に変更が生じた場合は、運営まで個別にご相談ください。

報告者:阿部大地(佐賀県立博物館学芸員)
報告タイトル:「ウィーン万国博覧会に向けた出品準備と『産物大略』の影響」

【要旨】
 これまでのウィーン万国博覧会に向けた展示品収集に関する研究は、明治政府、各使府県双方の視点から積み上げられている。いずれの研究にも共通して判明しているのが、明治政府が各地に「産物大略」というリストを送付し、収集の便宜を図っていた点である。
 しかし、これまでの研究では、地域別に送付された「産物大略」全てを実見することはなかった。全国一斉送付でありながらも、内容にばらつきのあった「産物大略」は、当然各地の収集に影響を及ぼしたことが推測されるが、その実態は未だ判然としない。
 そこで本報告では、「産物大略」を主軸に、出品準備の全国的な動態把握を試みる。そもそも「産物大略」とはどのような史料であったのか、収集にどのような作用をもたらしたのか、また、収集後の物産誌との関係はいかなるものであったのか検討する。

【参考文献】
・東京国立博物館編『東京国立博物館百年史』1973年
・橋詰文彦「万国博覧会の展示品収集と「信濃国産物大略」」『長野県歴史館研究紀要』4、1998年
・橋詰文彦「ウィーン万国博覧会の展示品収集―明治五年筑摩県飯田出張所管内における収集過程―」『信濃』50-9、1999年
・三浦泰之「ウィーン万国博覧会と開拓使・北海道」『北海道開拓記念館研究紀要』29、2001年
・阿部大地「山口県におけるウィーン万国博覧会の展示品収集―実地調査に注目して―」『洋学』24、2017年
・関根仁「ウィーン万国博覧会参加における御用掛」松尾正人編『近代日本成立期の研究―政治・外交編―』岩田書院、2018年