洋学史学会若手部会

洋学史学会に所属する大学院生・学部生を中心とする若手部会です。

【洋学史学会若手部会6月オンライン例会】開催案内

洋学史学会若手部会では6月オンライン例会を開催致します。
どなたでもご参加いただけますので、ご関心のあるかたは奮ってご参集ください。

【洋学史学会若手部会6月オンライン例会】
◆6月5日(土)開催
日時:2021年6月5日(土)14:00~16:10(例会終了後に茶話会を予定)
会場:参加者にURLを送付
参加資格:なし ※会員、非会員にかかわらずご参加いただけます。

ただし、事前登録制(参加登録フォーム
※6月3日(木)17時入力締切
回答後に変更が生じた場合、期日までにフォームを編集するか、洋学史学会若手部会運営(yogakushi.wakate@gmail.com)まで直接、ご相談ください。

報告者①:吉田宰(尾道市立大学講師)
報告タイトル:「西村遠里『居行子』の流布に関する書誌学的考察」
〈報告要旨〉
 西村遠里(享保3年〈1718〉~天明7年〈1787〉)は、市井の天文暦学者として活躍した京都の人である。『史記天官書図解』(宝暦4年〈1754〉成)や『貞享暦解』(宝暦14年〈1764〉成)といった天文暦学書はもちろんのこと、後半生においては『居行子』(安永4年〈1775〉刊)や『雨中問答』(安永7年〈1778〉刊)といった多くの随筆を著した。
 本報告で扱う『居行子』は、のち『同後編』『同新話』『同外編』とシリーズ化されて刊行された、いわば天文暦学者によるベストセラー随筆であった。試みに「日本古典籍総合目録データベース」(国文学研究資料館)で検索すると、『居行子』は55本もの所在が確認されている。しかし、本書の流布に関する研究は今のところ存しない。
 そこで、現段階での中間報告として、今回は『居行子』の流布に関する大枠を書誌学的に整理し、本書は異なる刷と版をあわせて少なくとも6種類の分類が可能であることを指摘する。また本書が当時の知の形成に果たした役割についても見通しを述べてみたい。
【参考文献】
渡辺敏夫『近世日本天文学史』上巻〔通史〕(恒星社厚生閣、1986年)
浅野三平「西村遠里考」(浅野三平『近世国学論攷』所収、翰林書房、1999年。初出1989年11月)
吉田宰「西村遠里と書肆銭屋―『万国夢物語』から『居行子』『雨中問答』まで―」(『語文研究』第120号、2015年12月)
吉田宰「西村遠里随筆考―蕃山学の受容を中心に―」(『近世文藝』第105号、2017年1月)
吉田宰「西村遠里『居行子』―解題と翻刻―(一)~(三)」(『文献探究』第55号~第57号、2017年3月~2019年3月) 

 

報告者②:西留いずみ(國學院大學大学院特別研究員)
報告タイトル:「『増補再版格物致知略説』訳出をめぐる金武良哲と久米邦武」
〈報告要旨〉
 本報告は、高田誠二が久米美術館所蔵の久米邦武や佐賀藩蘭学者金武良哲の自筆稿を元に平成8(1996)年に発表した「久米邦武と金武良哲の物理学手稿」に関連したものである。高田の論考は金武の訳稿『增補再版格物致知略説』の原著を、P. van der Burg, Schets der Natuurkunde, ten Dienst der Scholen. (1855)と特定し、書誌情報も併せて分析している。さらに高田は幕末期になされた金武の訳稿を、久米邦武が明治初期に修文した『物理学』を中心に考察している。報告では、報告者が佐賀県立博物館寄託金武良哲資料を整理する過程で見出した金武の自筆訳稿を取り上げ、久米邦武という儒教に造詣の深い歴史学者と、金武良哲という蘭学者の共同作業を再検討する。 
 具体的にはまず、両者の知識形成を整理した上で二人の関係性を考察する。次いで金武の直訳稿である『增補再版格物致知略説』と久米の修文稿『物理学』を対比させ考察を行い、蘭学に対する姿勢の相違点、久米の修文稿が久米の著作『米欧回覧実記』と影響し合っている点等を指摘する。
 高田の論稿は科学技術史的側面を中心とした考察となっているが報告者は今回、金武良哲資料を使用するなど蘭学史的切り口で考察を試みる。
【参考文献】
佐賀県立博物館寄託金武良哲資料
西留いずみ「近世後期佐賀藩蘭学者「金武良哲資料」の史料学的研究」『史学研究集録』第42号、2018年3月
高田誠二「久米邦武と金武良哲の物理学手稿」洋学史学会編『洋学』5号、1996年6月
久米美術館編『久米邦武文書 科学技術編』吉川弘文館、2000年1月