洋学史学会若手部会

洋学史学会に所属する大学院生・学部生を中心とする若手部会です。

【開催案内】洋学史学会若手部会2月オンライン例会

洋学史学会若手部会では2月オンライン例会を開催致します。
ご関心のある方は奮ってご参集ください。

【洋学史学会若手部会2月オンライン例会】
日時:2022年2月5日(土)14:00〜16:10(例会終了後に茶話会を予定)
会場:参加者にURLを送付
参加資格:なし ※会員、非会員にかかわらずご参加いただけます。
ただし、事前登録制(登録はコチラ※2月3日(木)17:00入力締切
回答後に変更が生じた場合、期日までにフォームを編集するか、洋学史学会若手部会運営(yogakushi.wakate@gmail.com)まで直接、ご相談ください。

報告者①:阿曽歩(国際基督教大学博士研究員)
報告タイトル:「大槻家と故郷(仮)」
〈報告要旨〉
 大槻玄沢やその息子磐渓、さらにその息子如電・文彦ら、名だたる学者たちを輩出した大槻家の本家(「宗家」)は一関にある。長く江戸で暮らした玄沢に加え、江戸生まれの息子や孫もまた、先行研究が指摘するように、みな一関を故郷と認識していた。
 「江戸の日本橋より唐、阿蘭陀迄境なしの水路也」と、林子平『海国兵談』の叙述を挙げるまでもなく、近世後期には世界地図や世界地理書の広まりにより、人々の世界観は大きく変化していた。そのような中で、玄沢は蘭学を担うものとして世界へと目を向ける一方で、同時に故郷への目配りも欠かさなかった。
 本報告では、大槻家、主に玄沢と磐渓に注目し、彼らの故郷への思いについて考察したい。世界が広がる中での地域への眼差しは如何なるものであったのだろうか。また、「宗家」との関連の中で、彼らにとって故郷はどのような意味を持ったのだろうか。

【参考文献】
相馬美貴子「大槻玄沢とふるさと一関」『GENTAKU 〜近代科学の扉を開いた人〜』一関市博物館、2007年
リンジー・モリソン「近世における「ふるさと」考」『アジア文化研究』41号、2015年

報告者②:菊地悠介(大本山永平寺学術事業推進室調査研究員・川崎市市民ミュージアム学芸スタッフ)
報告タイトル:「射和文庫における蔵書の構造と特質―特に竹川竹斎収集の翻訳書について―(仮)」
〈報告要旨〉
 射和文庫は伊勢国飯南郡射和村の竹川竹斎が嘉永7年(1854)に創設した私立図書館である。蔵書数は親戚・知人からの献本もあって1万冊余りに及んだが、明治以降散逸した。だが、現在も文庫は存続しており、ご子孫の管理のもと、竹川家や射和村に関する史料も含めておよそ3,000点が収蔵されている。
 また、射和文庫には、洋書の翻訳書が多数所蔵されている。幕末期には、様々な情報を知識人や有力村役人層が盛んに収集・活用しており、それらは諸家の資料目録を見てもそれがよくわかるが、射和文庫程の翻訳書を所蔵している家はあまり存在しないと考えられる。
 そこで、本報告では、射和文庫に所蔵されている蔵書の構造と蔵書内で翻訳書がどの程度を占めているのかを明らかにし、できうる限り翻訳書一点一点の情報及びそれらの入手経路を明らかにしたいと考えている。入手経路については、竹川竹斎の日記の記載からおっていきたいと考えている。そして、最後に翻訳書を所蔵していることがどのように竹川竹斎に影響を与えたのかについても言及したい。

【参考文献】
射和文庫蔵書目録編集委員会編『射和文庫蔵書目録』竹川竹斎翁百年祭実行委員会、1981年
高倉一紀「竹口家の教養と国学―蔵書構成と所蔵率の分析―」『伊勢商人竹口家の研究』泉書院、1999年
上野利三『幕末維新期伊勢商人の文化史的研究』多賀出版、2001年
松尾由希子「近世後期商家の蔵書形成と活用一陸奥国内池家の事例より一」『日本の教育史学』50、2007年
工藤航平『近世蔵書文化論―地域「知」の形成と社会―』勉誠出版、2017年