洋学史学会若手部会では、下記日程にて8月例会を開催いたします。ご関心のある方はふるってご参集ください。
◆洋学史学会若手部会8月例会
日時:2024年8月3日(土)14:00〜17:10、終了後に茶話会を実施予定
開催方法:Zoomによるオンライン開催
(参加用URLは後日、レジュメと同時に配布予定)
事前登録制、登録はこちらから。
8月1日(木)締め切り
報告者①:西嶋佑太郎(京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程/日本学術振興会特別研究員)
「訳語作成方法からみた『解体新書』の位置」
〈報告要旨〉
学術用語を西洋の言語から日本語(漢語)に翻訳するとき、どう翻訳するか(訳語作成方法)と、その方法をどう自覚するか(方法論)とは異なるものである。杉田玄白らによる『解体新書』(1774年刊行)は、三訳法(翻訳、義訳、直訳)の整理(方法論)や、「神経」「盲腸」などの個々の訳語の創出という点が注目されてきた。一方で、実態としての訳語作成方法からみた場合に、『解体新書』の位置づけは必ずしも明確ではないように思われる。
本報告では、大槻玄沢『重訂解体新書』「翻訳新定名義解」に挙げられる用語を、『解体新書』にさかのぼって原語と比較し、『解体新書』時点の訳語作成方法を素描する。続いて、先行する漢訳洋書等の訳語作成方法と比較する。結論として『解体新書』は、日本において西洋の言語から漢語へと模借法(loan translation, calque)を採用して大量に翻訳語を作成したことが特徴的であり、その後の学術用語翻訳の基礎となるものであったと言える。
〈参考文献〉
荒川清秀(2018)『日中漢語の生成と交流・受容 漢語語基の意味と造語力』、白帝社
徐克伟(2022)『兰学与汉学之间:江户幕府翻译事业《厚生新编》研究』、東方書店
西嶋佑太郎(2024)「『重訂解体新書』の訳語作成方法」(『国語語彙史の研究四十三』、和泉書院)
報告者②:濱口裕介(東洋大学人間科学総合研究所客員研究員)
「水戸藩主徳川斉昭の蝦夷地開拓構想と「北海道建置論」」(仮)
〈報告要旨〉
明治2年(1869)、松浦武四郎への諮問を経て明治新政府が蝦夷地を北海道へと改めたことは、日本地理像の大きな転換としてとらえることができる。通説では、この北海道を新設すべきという考え(「北海道建置論」)をはじめて主張した人物は、水戸藩主徳川斉昭(1800~1860)だといわれている。
報告者は、以前にも天保年間に水戸藩による蝦夷地海防・開拓構想を斉昭みずからが書き付けた史料『北方未来考』について論じたことがある。その際は、斉昭が松前蝦夷地を呼ぶ際の呼称「北地」に着目しながら、斉昭の地理認識について検討した。今回の報告では、前稿やその後見出した関連史料などを踏まえつつ、斉昭の蝦夷地海防・開拓論を「北海道建置論」の系譜のなかに位置づけ、その先駆としての意義を再考してみたいと思う。
〈参考文献〉
岩下哲典ほか『東アジアの秩序を考える ―歴史・経済・言語―』(春風社、2017年)
永井博『徳川斉昭 ―不確実な時代に生きて―』(山川出版社、2019年)