洋学史学会若手部会

洋学史学会に所属する大学院生・学部生を中心とする若手部会です。

【洋学史学会若手部会10月オンライン例会】開催案内

 洋学史学会若手部会では、新型コロナウイルス感染拡大防止を目的に、当面の間、オンラインにて例会を開催することといたします。
 10月は下記日程にて、オンライン例会を開催いたしますので、ふるってご参集ください。

【洋学史学会若手部会10月オンライン例会】
◆10月3日開催
日時:10月3日(土)14:00~15:00(例会終了後に茶話会を予定)
会場:参加者にURLを送付
参加資格:なし ※会員・非会員にかかわらずご参加いただけます
ただし、事前登録制
※10月1日(木)17時入力締め切り
例会準備の関係上、10月に開催される2回分の参加可否をまとめてとります。入力後に変更が生じた場合は、期日までにフォームを編集するか、部会運営まで個別にご相談ください。

報告者:菊地智博(東京大学大学院人文社会系研究科博士課程)
報告タイトル:「韮山代官江川英龍の海防建議書とその変遷」

【要旨】
 幕末期に幕府海防に参与した代官江川英龍の海防論を示す海防建議書群を原史料から再検討し、建議書の変遷過程を考察する。
 江川英龍は代官の立場を超え、海岸巡視や西洋砲術伝授、台場建設に携わったことが知られる。彼が天保八年以降に上申した数十点もの海防建議書は彼の抜擢の契機になったといわれ、その内容の先進性や渡辺崋山・幡崎鼎など洋学者からの影響が明らかにされている。
 しかし、先行する検討はいずれも明治期に次々代・英武が編纂したと考えられる史料『建議書抜萃』に拠っており、江川文庫に残る下書を含む複数の建議書原本は顧みられていない。
 本報告では、『抜萃』と原本との対応関係を明らかにした上で、建議書の修正・加筆から形成過程を復元し、江川の海防論がいかに変遷し、また現実の政策へ反映されたのかを考えたい。

【参考文献】
仲田正之「江川英龍の事績と天保改革」(同『韮山代官江川氏の研究』吉川弘文館、1998年)
戸羽山瀚編『江川坦庵全集』正編・別編 巌南堂書店、1972年
佐藤昌介『洋学史研究序説』岩波書店、1964年
藤田覚「海防論と東アジア」(青木美智男・河内八郎編『講座日本近世史七 開国』有斐閣、1985年)

◆10月24日開催
日時:10月24日(土)14:00~15:00(例会終了後に茶話会を予定)
会場:参加者にURLを送付
参加資格:なし ※会員・非会員にかかわらずご参加いただけます
ただし、事前登録制
※10月1日(木)17時入力締め切り
例会準備の関係上、10月に開催される2回分の参加可否をまとめてとります。入力後に変更が生じた場合は、期日までにフォームを編集するか、部会運営まで個別にご相談ください。

報告者:サイジ・モンテイロ ダニエル(パリ大学博士後期課程・東京大学史料編纂所外国人研究員)
報告タイトル:「西川如見の書物からみる近世長崎の学問と混合宇宙観」

【要旨】
 長崎学者西川如見(1648−1724)は、地理・天文学の知識で評価され、1719年に徳川吉宗の顧問を務めたと知られている。彼の「天学」思想は、科学・思想史のなかで朱子学かつ西洋学問両方の影響を受けた上で合理的な傾向を表すとも論じられてきた。しかし、如見が述べる「天学」は「洋学」と「儒学」の中間的な学問のみならず、むしろ多種な要素から構成された「混合宇宙観」だと把握できる。要素は五つに分類される:①近世日本の朱子学、②中国明代の儒学、③漢籍伝来のイエズス会系宇宙論、④長崎の南蛮系宇宙論、⑤オランダ商人の天文学的技術。
 本報告は、西川如見の混合宇宙観を網羅的に描写する『両儀集説』に注目し、その書物で引用される馮応京(?−1606)著『月令広義』からみられる②と③の複合的な関係を考察するものである。すなわち、マテオ・リッチ(1552−1610)経由で伝来したヨーロッパ由来の宇宙論を馮応京は『月令広義』で紹介し、西川如見は同書に基づいて西洋伝来の宇宙論を中国明代の知識として扱うことの意義を本報告は検討する。

【参考文献】
国立公文書館所蔵、西川如見著『両儀集説』(内閣文庫194−0055)、写本。
海野一隆 『日本人の大地像ー西洋地球説の受容をめぐって』、大修館書店、2006年。
海野一隆 「明・清におけるマテオ・リッチ系世界圖―主として新史料の検討」山田慶兒編『新発現中国科学史資料の研究―論考篇』、京都大学人文科学研究所、1985年。
孫承昇 『観念的交織―明清之際西方自然哲学在中国的伝播』、広東人民出版社、 2018年。