洋学史学会若手部会

洋学史学会に所属する大学院生・学部生を中心とする若手部会です。

【洋学史学会若手部会4月オンライン総会・例会】開催案内

 洋学史学会若手部会では2021年度も引き続き、オンラインでの例会を開催致します。4月は下記日程にて、総会と報告者2名による例会を開催いたします。例会はどなたでもご参加いただけますので、ご関心のあるかたはご参集ください。

【洋学史学会若手部会4月オンライン総会・例会】
《2021年度オンライン総会》
日時:2021年4月3日(土)13:00~13:45
会場:参加者にURLを送付
参加資格:洋学史学会若手部会正会員および賛助会員

《4月オンライン例会》
日時:2021年4月3日(土)14:00~16:10
   報告①(西脇彩央) 14:00~15:00
   報告②(橋本真吾) 15:10~16:10
   茶話会       16:20~
会場:参加者にURLを送付
参加資格:なし ※会員・非会員問わず、参加可

※オンライン総会、例会とも、事前登録制(参加登録フォーム
 例会準備の関係上、4月1日(木)17時に回答を締め切ります。回答後に変更が生じた場合、期日までにフォームを編集するか、洋学史学会若手部会運営(yogakushi.wakate@gmail.com)まで直接、ご相談ください。

報告者①:西脇彩央(京都大学大学院教育学研究科博士前期課程)
報告タイトル:「米国改革派教会による日本人留学生支援の実態と意義」
(旧タイトル:「米国改革派教会と幕末維新期の日本人留学生―グリフィス・コレクションの資料を中心に―」)


〈報告要旨〉
 米国ニュージャージー州にあるラトガース大学には、幕末明治期の日本人留学生関連資料を多く含むグリフィス・コレクションが所蔵されている。この資料群は、当時の日本人留学生を扱った先行研究でも適宜活用されてきたが、膨大であるため未活用の資料も多い。本報告では、グリフィス・コレクション内の未活用資料を用い、当時の米国留学の実態について考察する。特に、当時の日本人留学生に対し積極的な支援を展開した米国改革派教会に焦点を当てる。
 本報告では、米国改革派教会という留学生以外の視点に立ち、当時の留学生と教会、キリスト教との関わりを明らかにしたい。

〈参考文献〉
石附実『近代日本の海外留学史』中央公論社、1992
犬塚孝明「翻刻 杉浦弘蔵ノート」『研究年報』15巻、鹿児島県立短期大学地域研究書編、1987
杉井六郎「横井左平太と横井大平のアメリカ留学―オランダ改革派教会宣教師フルベッキの活動―」『社会科学』11号、同志社大学人文科学研究書、1970
高木不二『幕末維新期の米国留学―横井左平太の海軍修学』慶應大学出版社、2015

田中智子「幕末維新期のアメリカ留学―吉田清成を中心に」『日本近代国家の形成と展開』吉川弘文館、1996


報告者②:橋本真吾(東京工業大学非常勤講師)
報告タイトル:「渡辺崋山のアメリカ認識―蘭学者との協働と翻訳をめぐって―」

〈報告要旨〉
 本報告では、渡辺崋山(1793-1841)のアメリカ合衆国に関する認識と、その認識を獲得する上で蘭学者との協働が果たした意義の二点について考察する。
 崋山は、蘭学者との協働を通じて最新の海外情報を得ていた開明的知識人のように語られがちだが、ことアメリカ情報の分析に関しては苦戦を強いられたと考えられる。崋山が天保10(1839)年に起稿した「三部作」、すなわち『初稿 西洋事情書』・『再稿 西洋事情書』・『海外事情書』の中での記述の推移に注目すると、崋山はこれらを執筆する過程でアメリカ認識を急速に転換させ、最終段階でようやくアメリカの独立を確信するにいたったことがわかる。
 従来崋山のアメリカ認識は、崋山の思想や西洋観の一部として論じられてきたが、三部作の中でみられる記述の変化とその背景については検討の余地が残る。報告では、崋山のアメリカ認識の歴史的推移を明らかにするとともに、高野長英による学術事典の翻訳と執筆協力という視点から、崋山と蘭学者による協働の洋学史的意義について再考を試みる。

〈参考文献〉
佐藤昌介『洋学史の研究』(中央公論社、1980年)
佐藤昌介『渡辺崋山(人物叢書 新装版)』(吉川弘文館、1986年)
前田勉『近世後期の思想空間』(ぺりかん社、2009年)
橋本真吾「近世後期における対米観の形成―大槻玄沢から箕作省吾『坤輿図識』まで―」『洋学』25号(洋学史学会、2018年)
矢森小映子「渡辺崋山の蘭書理解―江戸知識人たちの蘭学受容―」『論集きんせい』40号(近世史研究会、2018年)