洋学史学会若手部会

洋学史学会に所属する大学院生・学部生を中心とする若手部会です。

【開催案内】洋学史学会若手部会2月例会

洋学史学会若手部会では、下記のとおり2月例会を開催します。
ご関心のある方はふるってご参集ください。
※対面・オンラインの併用での開催です。

◆洋学史学会若手部会2月例会(Zoom併用)
日時:2024年2月3日(土)14:00〜17:45 ※終了後に茶話会、懇親会を予定。
会場:電気通信大学(東京都調布市) 東1号館806教室
(Zoom URLは後日、レジュメと同時配布を予定)

事前登録制、登録はこちらから。
※2月1日(木)18:00申込締切。


報告者①:中里灯希(一橋大学大学院社会学研究科修士課程)
「斎藤阿具の歴史観」

〈報告要旨〉
 明治期から昭和初期にかけて活躍した教育者・日蘭交渉史研究者である斎藤阿具(1868-1942)は、第一高等学校在職中の1922(大正11)年に、『ヅーフと日本』を刊行した。『ヅーフと日本』は、東京帝国大学文科大学史学科で西洋流の歴史学研究手法を学んだ斎藤が、きわめて学術的な筆致によって、19世紀初頭のオランダ商館長ヘンドリック・ドゥフ(1777–1835)に関する論考を行った研究書として知られる。本書の中には、斎藤の歴史観にもとづくドゥフ評価と考えられる文章を数点確認することができる。こうした傾向は、斎藤の他の著作『近世史』(1897)や『西力東侵史』(1902)にも認められるものである。
 本報告では、『ヅーフと日本』を始めとする斎藤の著作類を、日蘭交渉史の先行研究としてではなく、19世紀後半から20世紀初頭を生きた研究者の歴史観を知ることができる「史料」として捉え、当時の教育者・日蘭交渉史研究者の歴史観がいかなるものであったのか、考察する。

〈参考文献〉
永原慶二『二〇世紀日本の歴史学』(吉川弘文館、2003年)
小澤実・佐藤雄基編『史学科の比較史 歴史学の制度化と近代日本』(勉誠出版、2022年)

報告者②:布川寛大(國學院大学大学院博士課程後期)
「吉田松陰による九州遊学の再検討−西洋列強情報の受容と反応−」(仮)

〈報告要旨〉
  本報告は、近世後期の長州藩士で兵学者の吉田松陰を取り上げ、同人が嘉永3年(1850)に実施した九州遊学中の読書活動における興味の変化に注目することで、西洋列強情報が同人へ与えた影響を考察するものである。
 古く、松陰による九州遊学は、晩年の尊皇思想とのかかわりから、主に陽明学や水戸学との関係で評価をされてきた。一方、近年では、「ウェスタン・インパクトとの邂逅」と評価されるなど、同遊学中の松陰による積極的な西洋列強情報の学習が注目されている。しかし、これらの研究・評価は、遊学中における松陰の読書活動のうち、特定の書籍との関係から九州遊学の意義を論じる傾向にあり、改めてその全体像を総合的に理解する必要があると考えている。
 そこで本報告では、主に松陰が遊学中につけた日記から読書記録を復元することで、遊学中における読書傾向の変化に注目したい。これは、藩の兵学者としてその対応に迫られる松陰個人と西洋列強情報との関係を明らかにするとともに、西洋列強の脅威が具体化しはじめる当該期において、西洋列強情報が近世社会へ受容される際の反応を示す一事例になると考えている。


〈参考文献〉
山口縣教育會編『吉田松陰全集(定本版)』第七巻(岩波書店、1935年)
桐原健真『吉田松陰の思想と行動−幕末日本における自他認識の転回−』(東北大学出版会、2009年)
栗田尚弥「葉山佐内の思想に関する一考察−「思想家」吉田松陰誕生前史−」(『法学新報』第9・10号、2015年)

問い合わせ先:yogakushi.wakate@gmail.com(洋学史学会若手部会運営)