洋学史学会若手部会

洋学史学会に所属する大学院生・学部生を中心とする若手部会です。

【洋学史学会若手部会8月オンライン例会】開催案内

 洋学史学会若手部会では、新型コロナウイルス感染拡大防止を目的に、当面の間、オンラインにて例会を開催することといたしました。
 緊急事態宣言は解除されましたが、今なお感染拡大防止の観点から、これまで同様の一堂に会する例会開催は現在も難しい現状にあります。そうした中でも、研究成果を報告する場を維持したい、若手研究者同士の交流を深め、研究活動のモチベーションを高めたいとの思いから、オンラインによる例会の開催を決定いたしました。
 8月は下記日程にて、オンライン例会を開催いたしますので、ふるってご参集ください。

【洋学史学会8月オンライン例会】
◆8月1日開催
日時:8月1日(土)14:00~15:00(例会終了後に茶話会を予定)
会場:参加者にURLを送付
参加資格:なし
ただし、事前登録制
※7月29日(木)17時入力締め切り
例会準備の関係上、8月に開催される2回分の参加可否をまとめてとります。入力後に変更が生じた場合は、運営まで個別にご相談ください。

報告者:山本瑞穂(東京大学大学院人文社会系研究科修士課程)
報告タイトル:「文化年間の幕府周辺における日露交渉史の把握の深化―大槻玄沢『北辺探事補遺』を中心に―」

【要旨】
 本報告の目的は、文化年間のロシアとの接触を契機に、幕府に近い学者による、海外情報に基づいた日露交渉史の整理を題材に、幕府に対してオランダ商館が果たした情報提供者としての役割を検討することである。
 仙台藩医・蘭学者の大槻玄沢による文化4年(1807)の著作『北辺探事 補遺』は、蝦夷地に出張する若年寄堀田正敦に提出された北方研究書である。同書において玄沢は、翻訳蘭書・オランダ通詞の書付・仙台藩の記録等の閲覧を通して、元文4年(1739)仙台沖出没の異国船が、最初の来日ロシア船であるとした。一方で、既に学問所儒者も、文化元年(1804)のレザノフ来航に際して老中に提出した上申書類において、ロシアの日本近海進出は元文年間から始まるとみなしており、その情報源はおそらくオランダ風説書である。
 本報告では、上記の学者の情報源の検討を通じ、オランダ商館を日露関係の中に位置づけることを試みる。

【参考文献】
・郡山良光『幕末日露関係史研究』、国書刊行会、1980年。
・藤田覚『近世後期政治史と対外関係』、東京大学出版会、2005年。
・早稲田大学図書館所蔵、大槻茂質撰『北邉探事』(洋学文庫08 A0050)。
・添川栗編著『有所不為斎雑録』第3集第24、中野同子代謄写、1942年。

 

◆8月8日開催
日時:8月8日(土)14:00~15:00(例会終了後に茶話会を予定)
会場:参加者にURLを送付
参加資格:なし
ただし、事前登録制
※7月29日(木)17時入力締め切り
例会準備の関係上、8月に開催される2回分の参加可否をまとめてとります。入力後に変更が生じた場合は、運営まで個別にご相談ください。

報告者:阿曽歩(国際基督教大学博士研究員)
報告タイトル:「大槻平泉旧蔵キリスト教関連資料に関する考察」

【要旨】
 
2013年に大槻家の御子孫により一関市博物館に寄贈された「大槻家寄贈資料」の約5,000点の中に、仙台藩藩校養賢堂の学頭であった大槻平泉(1773-1850)が旧蔵していた「蘭文旧約聖書ダニエル書」という資料がある。ダニエル書とは、資料の名前通り、旧約聖書の内の一篇である。本資料には、ダニエル書に関するオランダ語の文章とその内容を示す朱字が書かれている。さらに、本資料の裏表紙には、大槻玄沢の孫で、磐渓の息子である文彦により、史料に書き込まれた朱字が平泉の筆跡であろうことが記されている。
 
本資料を分析した結果、本資料は聖書の内容そのものではなく、当時蘭学者の間に広く出回っていたオランダ語の百科事典の一項目を写したものであったことがわかった。
 
近世後期ともなると、知識人の間でキリスト教に関する知識が広まっていたことは度々言われることである。しかし、どういった書物から知識を得ていたのかについては不明瞭な点が少なくない。本報告では、近世後期におけるキリスト教知識の受容という側面から、本資料の持つ意味について考察を試みたい。

【参考文献】
小岩弘明「大槻文彦自筆履歴書―大槻家旧蔵資料から―」『一関市博物館研究報告』17号、一関市博物館、2014年