洋学史学会若手部会

洋学史学会に所属する大学院生・学部生を中心とする若手部会です。

【第9回若手部会】内容報告

第9回若手部会を開催いたしました。今回の報告は、会員2名による研究報告でした。以下にその概要を報告いたします。

日時:2018年12月1日(土)13:30~16:45

 

研究報告①

松尾悠亮(明治大学大学院博士後期課程)「長州藩士田上宇平太の象先堂修業と『砲学新編』翻訳」

 

    明治大学図書館所蔵『砲学新編』の資料紹介および成立過程について考察がなされた。その際、特に翻訳者である田上宇平太の人物像について、各種史料を博捜したうえでの検討がなされた。フロアからは、『砲学新編』が幕末期の長州藩における砲術に影響を与えたか否かといった質問のほか、オランダ語の原書は、そもそも当時の日本やオランダでどのような位置づけであったのかといった指摘がなされた。

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松尾氏

 

研究報告②

吉田宰(九州大学大学院博士後期課程)「平賀源内『根南志具佐』のカッパ図―文学と本草学とのあわい―」

 

    平賀源内の小説『根南志具佐』に描かれたカッパ図の特徴分析に加え、同図の成立背景に、源内と交流のあった後藤梨春や松平頼恭といった人物らとの本草学を介した交流があったことを指摘した。フロアからは、18世紀の文学作品において「河童」、「カワタロウ」、「水虎」などの名称の変遷を整理する必要があるのではないかといった指摘のほか、その後の博物誌に『根南志具佐』のカッパ図の影響がどれほどあるか検討することで、本草学への影響をより具体的に検討できるのではないか、といった指摘がなされた。

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吉田氏

                                (文・阿部大地)