洋学史学会若手部会

洋学史学会に所属する大学院生・学部生を中心とする若手部会です。

【内容報告】2023年4月例会

 洋学史学会若手部会では4月総会・例会を対面・オンライン併用のハイブリッド形式で開催しました。以下、例会での研究報告の概要をお知らせします。

日時:2023年4月15日(土)14:00〜17:10
会場:電気通信大学、zoom

報告者①:望月みわ(大阪大学大学院文学研究科博士後期課程)
「軍事郵便制度の成立―日清戦争、北清事変における軍事郵便制度―」

 本報告では日露戦争時に確立したとされる軍事郵便制度について、その成立の過程を日清戦争、北清事変における陸軍の軍事郵便と野戦郵便局に注目することで検討した。日清戦争における軍事郵便制度については、専門職としての郵便脚夫の導入と、さらに軍事郵便業務における在外郵便局の機能が注目される。また北清事変においては逓信省が軍事郵便業務を担い、逓信省員の在外通信業務、軍事郵便業務に対する意識の向上が確認された。その上で報告者は、日露戦争時の軍事郵便制度の拡充を確認し、軍事郵便業務が戦後国際関係における利権の拡大の基盤となったことを指摘した。
 質疑応答では、軍事郵便制度の確立というシステムの解明が一定程度なされた先に、俘虜郵便のような戦地から実際に届いた郵便物を事例研究として行うことも可能ではないかとの提案がなされた。

報告者②:石本理彩
「日清・日露戦争における日本の従軍記者制度について

 本報告は、近代日本における従軍記者制度の成立と展開の分析を通じて、明治期の日本がいかにして従軍記者規定を定め、独自に制度的拡充をなしていったかを明らかにした。日清戦争では外国人記者に対する検閲制度において、その運用に大きな欠点があった。日露戦争では検閲体制強化に加え、新たな諸規定の制定がなされ、従軍記者制度が成熟することとなった。報告者によれば、日本独自の制度的拡充がなされる過程と日本の記者待遇が他国に与えた影響において、「外国人記者をどのように処遇したか」が重要なポイントとなる。また、日露戦後から1943年までの陸軍省告示第三号「陸軍従軍新聞記者心得」の運用についても解説がなされた。
 参加者からは、海軍の場合はどうなっていたのか、外務省外交史料館には関連する史料でどのような簿冊が所蔵されているのか等の質疑がなされた。